原子力発電という選択肢

浜岡原子力発電所の運転停止から見える事実
印刷用PDF 4.05MB
TOP

#01 供給力の確保

2011年5月、浜岡原子力発電所の運転停止。
中部電力は、360万kWの供給力を失い、発電計画の大幅な見直しが必要となりました。
発電計画とは、一般家庭やビル、工場などでご使用いただく電気の量を想定し、それとイコールになるよう「いつ、どこの発電所でどれだけ発電するか」を決めるものです。通常は、発電所の保守・点検による停止期間、燃料の調達状況、燃料費などの発電コストなどを考慮し、火力、水力、原子力、太陽光、風力などそれぞれの電源の特徴を活かして、バランスよく組み合わせて発電計画を立てます。しかし、「ベース」を担っていた浜岡原子力発電所の計画外の運転停止によって、供給力を補うために奔走することになりました。

具体的には、火力発電所の定期点検の時期の変更や、可能な限り定期点検の期間短縮に努めることで、夏や冬など電気をたくさん必要とする時期の供給力を確保。また、使わなくなった老朽火力発電所を急遽修理して動かすなどの対応をしています。
このような対応により安定供給に努めていますが、大規模な定期点検には期間全体で延べ2~3万人の作業員の手配や、1年前から発注が必要な部品の手配などの調整が伴い、定期点検時期の変更や、期間の短縮は容易ではありません。また、老朽火力発電所は故障リスクが高く、その部品が製造中止になっているものもあるため修理も困難です。
お客さまに節電にご協力いただきながら、夏や冬を避けて定期点検を実施し、電力需要のピーク時に老朽火力に頼ることで電力不足を回避していますが、安定して電気をお届けするには盤石の体制とは言えません。
1日の電気の使われ方と電源構成

浜岡原子力発電所の運転停止以降、高効率の最新鋭火力発電所はベースの役割を、老朽火力発電所は、電力需要のピーク時に対応して稼働するという役割と、他の火力発電所のトラブルに備えるという役割を担っています。

火力発電所の定期点検の画像

火力発電所の定期点検

コラム

無尽蔵にある太陽の光や風の力を利用すれば、
火力発電に頼らなくてすむのでは?

中部電力最大規模のメガソーラーたけとよ。ナゴヤドーム3個分の敷地に約4万枚の太陽光パネルが並びます。この広大な敷地で発電できる1年間の発電量は、730万kWh。これは、メガソーラーたけとよの対岸にある碧南火力発電所では1時間47分でまかなうことができる量です。
また、発電量は、雨の日には少ないだけでなく、雲の動きとともに変化します。電気は大量にためておくことができないため、使う量とつくる量を常に同じになるようにしなければなりません。発電量が 一定にならない太陽光発電設備が大量導入されると、その大きな変動分を吸収するために火力発電設備が必要となり、結果的には設備の二重投資になります。風力発電についても、風によって発電量が変化するので同様のことが言えます。
中部電力では、課題に取り組みながら、太陽光発電、風力発電の開発を積極的に進めていますが、太陽光発電を原子力発電や火力発電の代替にするには、まだ難しい現状です。

一般家庭2,000世帯の年間使用電力量(730万kWh)を発電するためにかかる稼働時間
電気の「使う量」=「つくる量」
TOPへ戻る

#02 火力発電で使用する燃料の確保

浜岡原子力発電所の運転停止に伴って、発電機の確保と同時に取り組んでいるのが燃料の確保です。かつてないほどの多量の追加調達が必要となったLNGについては、国から運転停止要請があった直後、中東カタールと交渉を行いました。また、これまで受入実績のないイエメン、ペルー、ベルギーからも調達し、2011年度は、のべ11ヶ国から調達を実施しました。
2013年度、中部電力の火力発電所全体で使ったLNGの総量は、1302万t。浜岡原子力発電所の運転停止前に比べ30%以上増えています。Q-Flexという9万t級のタンカーでカタールから2~3週間かけて運んできた燃料を、2日半で使い切り、タンカーは2日に1回入港するという状況です。
浜岡原子力発電所の供給力を代替することで、火力発電でまかなう電気の割合は90%以上を占める状況となっています。
カタールからの輸送ルート
発電電力量構成
TOPへ戻る

#03 燃料費の増加

このように火力発電に頼り切る状況は、新たな問題を生み出しています。
最も大きな問題の一つは、燃料費の増加です。浜岡原子力発電所の運転停止に伴う燃料費の増大が年間で3,000億円程度にまでおよびました。これは、浜岡原子力発電所の安全性向上対策工事にかかる金額と同規模の額を毎年追加で負担していることになります。
2013年度の燃料費は、燃料調達量の増加に加え、燃料価格の上昇や円安の進行によって、1兆3,141億円となりました。中部電力では、燃料調達力の強化など燃料費の削減に努めるとともに設備投資や人件費などのコストダウンを図っていますが、経常費用に占める燃料費の割合は約50%に増加。従前の電気料金の水準では、最大の使命である電力の安全・安定供給に必要な費用を賄うことが困難な状況となり、中部電力は、やむを得ず電気料金の値上げを実施させていただきました。
経常費用に占める燃料費

コラム

中部電力米国フリーポートLNGプロジェクト

近年の技術革新により採掘することが可能になった新しい天然ガス資源であるシェールガス。中部電力では、米国のフリーポートLNG基地にて、天然ガスを液化しLNGを生産する設備の利用契約を締結しました。
天然ガスを自ら調達し、LNGの生産者となることで、LNGの調達量や輸送先を臨機応変に決めることができるようになり、電力需要に応じた柔軟なLNG調達が可能になると考えています。 なお、輸入開始は、2018年以降になる見込みです。

中部電力米国フリーポートLNG基地
中部電力米国フリーポートLNG基地の拡大画像
TOPへ戻る

#04 CO2排出量の増加

また、浜岡原子力発電所の運転停止による影響は、費用の増加だけではありません。地球温暖化の問題にもつながっています。
原子力発電は、発電する際にCO2を発生しませんが、LNG、石炭、石油を燃やして電気をつくる火力発電は、温室効果ガスであるCO2を発生します。
中部電力は、従来から火力発電の熱効率を高めるとともに、再生可能エネルギーの利用を進めるなどして、CO2排出量の削減に取り組んでいますが、浜岡原子力発電所の運転停止にともなって火力発電の使用が増えたことなどにより、CO2排出量は、2011年度と2012年度の2年間で約2,200万t増加しています。
電源別ライフサイクルCO2排出量
CO2排出原単位の推移
このように浜岡原子力発電所の運転停止に伴って、火力発電に頼り切る状況は、燃料費の増加とCO2排出量の増加という問題を生み出しています。しかし、こうした問題とは別に、将来に対する不安も見え始めています。
TOPへ戻る

#05 燃料が途絶するリスク

エネルギー自給率がわずか5%しかない日本。島国のため、ヨーロッパのように隣の国から送電線を通して電気を買うことができません。また、パイプラインをつないでガスを買うことも容易ではありません。
中部電力は、オイルショック以降、エネルギー源の多様化、調達先の多様化に向けて進めてきましたが、浜岡原子力発電所の運転停止によって、発電電力量の90%以上を火力発電に、また、70%近くをLNG火力発電に頼る状態となっています。さらに、LNGの60%をカタールからの輸入で賄っています。その輸送ルート上で何か起こった場合、燃料が途絶するリスクがあります。万が一、中東で軍事的な衝突が発生し、ホルムズ海峡が封鎖されると、燃料の海上輸送がストップする可能性があります。
発電電力量の推移
主要国の一次エネルギー自給率

コラム

海外の資源に頼るリスク

1973年、第四次中東戦争をきっかけに日本を襲ったオイルショック。石油の供給不安と価格の高騰は、日本社会に大きな影響を与えました。中部電力にとっても例外ではありません。当時、石油火力発電の比率が80%と、石油に依存していたため、燃料欠乏による電力不足の危機に陥りました。日本は、「エネルギー資源に乏しく、かつ、島国で他国からの資源輸送に制約がある」ため、「燃料を長期にわたって、安定的・経済的に調達できるかどうかは不透明である」ことが浮き彫りになったのです。 オイルショックは、一つのエネルギーに過度に依存するリスクを教訓として残しました。

1973年 オイルショックの混乱の画像

1973年 オイルショックの混乱

TOPへ戻る

#06 燃料価格の上昇

近年、燃料価格は上昇傾向にあり、世界の燃料需要の増加や投機資金の流入などによって、燃料価格は大きく変動するリスクもあります。また、火力発電に頼る日本は、交渉力が弱く、足元を見られてしまう可能性もあります。
こうしたリスクは、電気料金の上昇につながって、生活や産業に影響し、景気の悪化を引き起こしかねません。
現在、火力発電の増加に伴って燃料の輸入量が増え、その増加額は、日本全体では、年間3兆6,000億円。1日あたり100億円の国富が海外に流出しています。
日本の燃料輸入価格の推移
TOPへ戻る

#07 エネルギー資源の少ない日本の選択

2014年4月、国のエネルギー基本計画において、原子力発電は、「安全性の確保を大前提にエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけられました。 原子力発電の依存度は、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低くするとしながら、使用済燃料をリサイクルする政策も継続して進めていくこととされました。
高レベル放射性廃棄物の最終処分という課題については、現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう、今後、国が前面に立って取り組みを進めるとされました。

参考情報
別ウィンドウで開く:エネルギー基本計画(資源エネルギー庁ホームページ)別ウィンドウで開く:エネルギー白書2014(資源エネルギー庁ホームページ)

エネルギー基本計画の本文抜粋

コラム

高レベル放射性廃棄物の地層処分

日本では、地下300mより深い安定した地層に処分することが法律で定められており、その技術的信頼性も確立しています。
地層処分は国際的に共通した考え方となっており、すでに計画が具体化している国もありますが、日本では、候補地の選定に向けた調査に入れていません。今後、最終処分場の有望地の選定や理解活動など、国としての取り組みが強化されます。

参考情報
別ウィンドウで開く:地層処分について(原子力発電環境整備機構ホームページ)

地層処分施設概要
オンカロ構内(フィンランド)の画像

オンカロ構内(フィンランド)

エスポ岩盤研究所(スウェーデン)の画像

エスポ岩盤研究所(スウェーデン)

ウラン235 1gでつくられるエネルギー

そもそも、原子力発電は
どのような特徴があるのでしょうか?

原子力発電の燃料であるウラン(ウラン235)は、わずか1gで、石油2000リットル分のエネルギーを生み出すほどのパワーがあります。燃料は、「燃料集合体」という形に加工・成型されて一度、原子炉に入れると、4~5年の間、継続して使用することができ、その間、燃料は国内に備蓄しているのと同じくらいの効果が得られます。また、使い終えた燃料は、一部を資源として再利用することができるため、原子力発電は準国産エネルギーとして位置づけられています。

TOP
へ戻る
more
浜岡原子力発電所の今、これから
火力発電、水力発電、太陽光発電、風力発電、そして、原子力発電・・・電源には、それぞれ一長一短があります。エネルギー資源の乏しい日本において、化石燃料価格の高騰や、地球温暖化という課題に対処しつつ、将来にわたり安定的にエネルギーを確保していくためには、さまざまな電源の選択肢を持ち、バランスよく活用することが求められます。

「原子力発電は選択肢の一つ。」

中部電力は、安全の確保と地域の信頼を最優先に、原子力を引き続き重要な電源として活用することが不可欠であると考えています。福島第一の事故から今なお、多くの方々が避難生活を強いられており、社会の皆さまに大変なご心配やご迷惑をおかけしていることを、電気事業者として真摯に受け止め、二度と同様の事故を繰り返さないために中部電力は「出来ることは全てやりきる」という覚悟で、今、浜岡原子力発電所の安全性向上に取り組んでいます。